化学的・物理的危害要因情報
化学的危害要因
農薬
農薬取締法の改正(平成14年12月11日交付、平成15年3月10日施行)
農薬は登録されたものでなければ販売することはできない。ところが、平成14年、無登録農薬の使用が明るみにでて、洋ナシなど農産物が大量に廃棄されたという事件があった。無登録農薬が広範囲に使われた背景には、インターネットの普及などで、外国製品が簡単に入手できるようになったことも原因の一つであろう。以前は、輸入業者、販売業者等、業とするものがいて、使用者はこれらの業者から農薬を購入するのが一般的であり、したがって、業者に規制をかけることで問題はなかった。ところが、個人輸入などによる無登録農薬の使用が明るみに出たこともあり、法規に対しても問題点が指摘されるようになった。
無登録農薬については、改正前では、販売してはならない、となっていたのが、改正後は販売だけでなく製造、輸入、使用も禁止となった。
(1)使用基準の遵守
使用者は、登録された農薬を使わなければならないことはもちろんのこと、登録農薬であっても、使用基準に従って使用することとし、きめられた作物、使用量、使用回数、使用時期を守らない場合、罰則が科せられる。それまでも安全使用基準が定められ、努力することとなっていたのが強化されたといえる。これに関連して、いわゆるマイナー作物、例えばニラ、わさびなど、生産量が少ないものについては、使える農薬がないか、非常に少ない。農家は、例えばニラの場合であれば、類似した作物であるねぎに適用のある農薬を使うことで病害虫の被害に対応してきたという例がある。法改正後はこのような適用外の作物に使うことは違反となる。必要な防除剤を確保するために、都道府県などの協力をえて、残留試験などのデータの整備を急ぐことになった。
(2)特定農薬(特定防除資材)の指定
農薬取締法の改正によって、使用者に対する規制が強化されることになるが、過剰規制にならないように、例外措置として考えられたのが特定農薬である。従来、使用者が市販の農薬ではなく、食品など常識としては安全な物質を病害虫の防除に使用してきた例が多々ある。これらの情報を集めたところ、700種類を超える防除技術が寄せられた。これらの技術について、防除効果があるのか、散布した農産物の安全性には問題はないのかの2点について検討され、平成15年末までに、食酢、重曹(いずれも食品として用いられている)、および一部の天敵が指定された。今後、順次評価されていくことになろう。
改正後の措置
- 無登録農薬の製造及び輸入の禁止
- 輸入代行業者による広告の制限
- 無登録農薬の使用の禁止
- 農薬の使用基準の設定
- 法律違反の罰則の強化