海外における予測微生物学モデル
4.定量微生物学的リスク評価ツール
食品の製造,流通,消費に至る種々のシナリオを想定して,数種類の病原性細菌の食中毒リスクを予測推定することが可能なソフトウェアツールが開発・公開されている。定量的な微生物学的リスク評価を,簡易に実行可能とするもので,適切かつ効果的なリスク管理措置を講ずるための基礎情報を得ることができる。一部のソフトウェアでは,微生物試験におけるサンプリングプランの策定,比較評価ができる。
1)FDA iRisk (https://irisk.foodrisk.org)
FDA-iRISK は数種類の病原性細菌と食品との組み合わせによるリスク評価を実行して,リスクの優先順位を決定するための機能を提供している。リスク評価モデルのためのひな形を提供している。リスク指標としてDALYs(Disability-Adjusted Life Yearsの頭文字をとったもの。死が早まることで失われた生命年数と健康でない状態で生活することにより失われている生命年数を合わせた時間換算の指標。)を導出する点は他のソフトウェアと大きく異なる点である。
2)Risk Ranger (http://www.utas.edu.au/tia/centres/food-systems/fact-sheets-and-tools/fact-sheets-and-tools/risk-assessment/risk-ranger)
Excelスプレッドシート上で動作するリスクアセスメントのためのツールプログラム。諸条件を選択あるいは入力することで対象とする食品のリスクをランキング評価する。操作は比較的分かりやすいが,評価結果が高リスクに偏りがちになる傾向がある。
3)Baseline (http://www.baselineapp.com)
Baseline は5種類の病原菌の増殖および死滅を予測することができる。また,サンプリングプランを検討するための追加機能を有する。Web経由で,個々のPCのウェブブラウザー上で動作する。
4)TriMiCri (DTU, )
定量的微生物学的リスク評価の結果を基礎とした,微生物試験のサンプリングプランを提示するソフトウェアである。鶏肉のカンピロバクター汚染を評価するモジュールが搭載さいれている。個々のPCへダウンロードして,独立したソフトウェアとして動作する。
5)sQMRA (RIVM, Netherland)
Excelスプレッドシート上で動作するリスク評価ソフトウェアである。機敏な動作と,比較的分かりやすい入力インターフェースが特徴である。また,交差汚染の影響を組み込んでの評価ができる点も特徴である。
参考文献
Tenenhaus-Aziza, F., and M. Ellouze. 2015. Software for predictive microbiology and risk assessment: A description and comparison of tools presented at the ICPMF8 Software Fair. Food Microbiol. 45:290-299.