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米国食品安全強化法とは

米国食品安全強化法とは

1.制定の経緯

アメリカでは、1938年の食品・医薬品・化粧品法制定以来、逐次食品安全制度を充実し、HACCPの導入、リスク分析手法の開発など食品安全に関する制度について世界をリードする役割を果たしてきた。最近では、2002年のバイオテロリズム法によるトレーサビリティの導入や輸入食品の安全対策の強化が図られた。

しかし、近年食品の安全に関する事故は多く、特に多発する食中毒については、減少するよりも最近やや増加気味であるなど、食品安全に対する不安が問題視され、現行の食品安全制度の有効性に対する疑問も生じていた。

このような状況から、2007年にブッシュ大統領は、食品安全制度の対する総点検を求め、その後オバマ大統領は、ワーキンググループの設立など食品安全対策を打ち出した。一方、議会においても2007年から食品安全制度の欠陥と改革について議論され、いくつかの食品安全法案が発表された。2009年ジョン・ディンケル下院議員(ミネソタ州)により食品安全強化法案が提出され、同年7月30日下院を通過した。また、上院においても2009年3月上院法案がダービン上院議員によって提出され、2010年11月30日に可決した。その後2011年1月に大統領署名が行われ成立した。

食品安全強化法の内容は幅広く、関連する規則の制定を待って段階的に施行されている。

2.主な内容

米国食品安全強化法(以下「FSMA」)の主要措置は、食品危害に対する予防管理(preventive control)の強化、危害発生の場合の対応の強化、輸入食品の安全対策の強化、FDAの体制の強化等である。

(1)食品危害に対する予防管理の強化

FSMAでは、食品危害を予防し、発生と被害を最小限にする予防措置に重点が置かれており、事業者に対する具体的な予防管理の義務化、FDAの検査や事業者の記録閲覧などの権限の強化及び予防管理を中心とした新制度の創設などが行われた。

(2)農産物の安全に係る取扱基準(第105条)

適用対象となる農場に対し

  • 従業員向けトレーニング
  • 衛生管理の徹底
  • 農業用水の衛生管理

を義務付けるとともに、検証活動に関する記録の保存についても義務付けられた。

(3)適正製造規範

適正製造規範21 CFR Part 110(第110条)に関する規則が改正され(表1)、新たに危害要因分析及びリスクに基づく予防管理に関する21 CFR Part 117(第117条)として新設された。また、FDAの権限の強化、食品防御についても盛り込まれた。

表1 Part117の構成
  • Subpart A 一般規定
  • Subpart B 現行適正製造規範
  • Subpart C 危害分析及びリスクに基づく予防管理
  • Subpart D 修正要件
  • Subpart E 的確施設免除の撤回
  • Subpart F 作成・保管が必須の記録に適用される要求事項
  • Subpart G サプライチェーン・プログラム

(4)危害発生の場合の対応の強化

検査頻度の向上、トレーサビリティの強化、義務回収の導入等、食品危害の原因の早期究明及び危害発生の場合の対応が強化された。(表2)

表5 トレーサビリティに関するFDAへの勧告
  1. FDAは規制を行うすべての食品について記録及び保存についての統一した要求事項を制定すること。また、リスクの程度に基づく要求事項の例外を認めないこと。
  2. FDAは、食品を製造、加工、包装、輸送、配送、受け入れ、保管又は輸入する企業に対し、FDAの定義に基づき、CTEs(Critikal Tracking Events:重要追跡工程)及びKDEs(Key Data Elements:主要データ要素)を明確にし、記録・保存することを求めること。
  3. 食品供給工程のそれぞれの組織が、製品追跡計画を開発し、文書化し、実行するすることを要求されること。
  4. FDAは、業界が自ら実施している取り組みを奨励し規則提案の事前通報又は他の同様の手法により利害関係者の意見を求めること。
  5. FDAは、製品追跡検査(product tracking investigations)に必要となる情報を明確かつより継続的に明らかにし、産業界に伝えること。
  6. FDAは、製品追跡検査の際に必要な、CTEs及びKTEsの報告及び情報収集のための標準化された電子的な手法を開発すること。
  7. FDAは、標準化された報告手法によって提出される要約されたCTEs及びKTEsに関する情報を受け入れ、こうした情報に基づき検査を開始
  8. 可能な場合、FDAは、1つの段階以上の(more than one level)追跡データを要求すること。
  9. FDAは、規制当局の要求に応じ提出された情報の効果的な統合及び分析を可能とする技術基盤の採用を検討すること。この技術基盤は他の規制当局にも利用可能とすること。
  10. FDAは、現在の指揮命令プロセスを活用し、州及び地方の健康・規制当局間の遡及検査の調整及び対応手順の確立を行うこと。さらに、FDAは製品追跡検査に、問題となっている食品の業界内の専門家を正式に活用すること。

(5)輸入食品の安全対策の強化

輸入食品の安全確保について、輸入事業者の義務拡大、海外施設の検査の強化等を中心に大幅に強化された。内容は、海外の供給事業者の予防管理実施と法令違反がないかを輸入事業者が確認しなければならない義務、輸入証明書の要求、海外施設検査拒否の場合の輸入停止などである。さらに、輸出国の食品安全に関する制度がアメリカと同等でなければならないとし、FDAに対してこれを輸出国に可能な限り要求していかなければならないとの規定も設けられた。

3.関連する条文1)

(1)外国施設へのFDA検査の大幅強化(第201条、第306条)

食品医薬品局(FDA)の権限が大幅に強化され、米国内に流通する食品を製造する外国の食品関連施設に対しても査察が行われる。

(2)バイオテロ法に基づく登録情報の更新制度の導入(第102条)

米国内でヒトや動物の消費に供するための食品を製造・加工、梱包、保管する国内外の施設は、バイオテロ法に基づく食品医薬品局(FDA)への施設登録が必要とされた。

(3)「米国代理人」の義務の強化(102条、第107条)

食品医薬品局(FDA)による外国施設の査察通知は、外国施設に届くと同時に米国代理人にも届く場合があり、米国代理人がFDAと円滑なコミュニケーションを図ることが重要になる。

FDAによる外国施設の「再査察」の際の手数料の徴収は、米国代理人が請求対象となる。また、輸入食品の再検査、食品関連施設の再査察、強制的リコールの場合、輸入業者が任意適格輸入業者プログラムに参加する場合には、手数料が徴収される。外国食品関連施設の再査察の手数料は米国代理人が、輸入食品の再検査の手数料は輸入業者が支払いの義務を負う。

(4)食品安全計画の策定・実施(第103条)

バイオテロ法に基づく登録施設は、第103条により予防管理措置・食品安全計画を策定・実施しなければならない。

(5)野菜・果実安全基準(105条)

ヒトが消費する果実・野菜を、未加工または自然な状態で生産、収穫、包装及び保管する農場は、微生物学的汚染リスクを最小化するための、FDAが示す手続き、手順及び慣行に従うこととなった。

(6)意図的な食品不良の防止(第106条)

意図的に不良が引き起こされるリスクが高い消費者用に包装される以前のバルクとして扱われる食品を対象に、流通過程における脆弱な点について意図的な食品不良事故を防止する措置が義務付けられた。

(7)米国の食品輸入者による輸入食品の安全検証(外国供給業者検証プログラム)(第301条)

輸入業者(輸入時における米国内の食品の所有者、代理人)に、輸入食品が

  • (1)第103条の計画に沿って製造されたか、または、第105条が規定する農産物の場合は同条の基準に従っているか、
  • (2)不良状態(adulterated)ではないか、
  • (3)不当表示(misbranded)がなされていないか

について、リスクに応じた外国供給業者の検証を行うことが義務付けられた。

(8)食品の輸入迅速化のための任意プログラム(任意適格輸入業者プログラム)(第302条)

任意で参加した輸入業者のための食品輸入の手続き迅速化プログラムである任意適格輸入業者プログラム(Voluntary Qualified Importer Program)が導入された。プログラムに参加できるのは、認定を受けた第三者監査人の証明を受けた食品関連施設から食品を輸入する業者である。

(9)輸入食品に対する証明書の要求(第303条)

FDAが必要と認めるときは、食品の輸入に際し、政府または認定を受けた第三者監査人の証明書を要求できることなった。証明書を要求するかどうかは、FDAが食品のリスクや生産地のリスクなどを考慮して決定される。

(10)第三者監査制度の導入(第307条)

上記(8)の任意適格輸入業者プログラムに参加するために必要な証明や、(9)の輸入時の証明を行う第三者の監査制度が創設された。

(11)試験所の認定制度の導入(第202条)

食品の輸入時の試験検査は、FDA の承認を受けた認定機関の認定を受けた試験所が行うこととされた。FDA に試験結果を求められた場合は、認定試験所に試験を依頼し、その結果を提出しなければならない。試験所の認定は5年ごとの更新制である。

(12)高リスク食品のトレーサビリティの強化(第204条)

トレーサビリティ強化を目的として、FDAが指定する高リスク食品については、2年間の記録保存が義務付けられた。

(13)衛生的な食品輸送(第111条)

食品の衛生的な輸送を確保することが義務付けられた。具体的には、食品の温度の不適切な管理、積荷交換時の車両の不完全な清掃等、輸送上の食品安全リスクを予防することが求められています。

4.個別事項の解説

(1)外国施設へのFDA検査の大幅強化(第201条、第306条)

FDAによる査察は2012年夏ごろから行われている。原則として査察要請の24時間以内(またはFDAが示す期限内)に応答しないと査察拒否とみなされ、当該外国施設からの食品輸入は禁止される。なお、FDAによる施設の再査察には高額の手数料が請求され、外国施設の場合、米国代理人に支払い義務が生じる。

これまでFDAは人員・予算不足から食品関連施設への査察は十分に行っていなかったため、FDAの「外国施設への査察」権限が大幅に強化された。FDAに対し、2011年に600ヵ所の外国施設を査察し、その後5年間にわたり毎年外国施設の査察を2倍にすることとされている。

査察の対象となる施設は、バイオテロ法第305条に基づきFDAに施設登録している施設である。

バイオテロ法の「食品」の定義に含まれるものは、以下のとおりであるが、これらに限らない。2)

  • (1)栄養補助食品・栄養成分
  • (2)乳児用ミルク
  • (3)飲料(アルコール飲料、ボトル詰め飲料水を含む)
  • (4)果実・野菜
  • (5)水産物・水産加工品
  • (6)乳製品・殻つき卵
  • (7)食品またはその構成物として使用される未加工農産品
  • (8)缶詰・冷凍食品
  • (9)パン、菓子類、キャンディー(チューインガム含む)
  • (10)生きている食用動物
  • (11)飼料・ペットフード
  • (12)食品および資料の成分
  • (13)食品および飼料の添加物

(2)バイオテロ法に基づく登録情報の更新制度の導入3)(第102条)

対象となる者は、米国で消費する食品を自己の施設において製造・加工、包装又は保管を始める前にFDAに登録しなければならない。登録は偶数年の10月1日から12月31日までの期間中に更新しなければならない。登録・更新は電子的、郵送又はFAXにより行うことができる。登録手数料は無料である。

登録に必要な情報は、施設の名称、住所、電話番号等のほか当該施設で製造、加工、包装又は保管される食品が該当する食品商品分類、施設の活動の種類などである。活動の種類は取り扱う食品商品分類ごとに届け出る必要がある。

活動の種類は以下のうちから選択する。

  • (i)人が摂取する食品を常温で貯蔵する倉庫・保管施設
  • (ii)人が摂取する食品の製造倉庫・保管施設
  • (iii)人が摂取する食品の冷凍倉庫・保管施設
  • (iv)州間輸送ケータリング業者・ケータリング拠点
  • (v)契約殺菌業者
  • (vi)ラベル業者・ラベル貼り替え業者
  • (vii)製造業者・加工業者
  • (viii)酸性食品加工業者
  • (ix)低酸性食品加工業者
  • (x)農場混合型施設
  • (xi)包装者・再包装(小分け包装)者
  • (xii)サルベージ業者(再生業者)
  • (xiii)動物向け食品倉庫・保管業者
  • (xiv)その他の活動

外国施設については、以下の追加情報が必要である。

  • (1)外国施設の米国内代理人の氏名、住所、電話番号及び電子メールアドレス
  • (2)緊急連絡先の電話番号及び電子メールアドレス

(3)「米国代理人」の義務の強化(102条、第107条)

登録等に際し、米国内の代理人に手数料の支払い義務や外国施設について米国内代理人の情報を提供する必要があることについては(1)及び(2)で述べたとおりである。第107条では手数料徴収に関する手続き等の詳細について規定されている4)

(4)食品安全計画の策定・実施(第103条)

HACCPの対象となっている食品施設等を除きFDAに登録を義務付けられているすべての施設は、危害の発生を防止し、最小限にする予防管理措置を具体的に定め実施しなければならないことになった(罰則を伴う義務)。また、関連する記録の2年間の保存義務が課せられた(第103条)。

 

2013年1月に規則案である「食品のための適正製造規範(Current Good Manufacturing Practice)並びに危害分析及びリスクに基づく予防管理」が公表され、パブリックコメントの募集が行われた。また、2014年9月には規則案をより実用的、柔軟かつ効果的にするための修正が提案された。最終規則は2015年の8月に公表され、9月に官報に掲載された。2016年9月から適用される。

 

第103条「人の食品に対する予防管理に関する最終規則の主な内容は以下のとおりである。なお、本規則はPCHF(Preventive Controls of Human Food)と略されることがある。

1)対象施設

危害要因分析及びリスクに基づく予防管理を含む食品安全システムを確立し実施しなければならない。規則は、以下を含む文書化された食品安全計画を要求している:

「危害要因分析」:危害要因は自然発生や意図しない導入や、あるいは経済的利益を得るための意図的導入(もしそれが食品の安全性に影響を及ぼすものであれば。)により起こりうる。「予防管理(preventive control)」:これらの手法は予防管理が必要な危害要因を最小限にし、又は予防されることを確実にしなければならない。手法には、加工、アレルゲン及び衛生的管理、並びに供給チェーン管理(supply chain control)及びリコール計画が含まれる。

「予防管理の監視とマネジメント」:規則は、予防管理が効果的に運用され、起こりうる問題を確実に是正するための柔軟性を有している。

「監視(monitoring) 」: 例えば、病原菌を殺すための加熱工程の監視は実際の温度値を含み、金属による危害要因を最小化するため行われる単なる監視活動を行った日付の記録よりも高い頻度で行われる。

「是正措置及び修正」:修正は、食品生産に伴って発生する重大でない、単発の問題を適時に特定し、修正するステップである。是正措置は、予防管理の実施を必要とする問題を特定し、問題の再発可能性を低減し、影響を受けた食品の安全性を評価し、それが商品ルートに入ることを防止する活動を含む。是正措置は、記録を残さなければならない。

「検証」:この活動は、予防管理が一貫して実施され効果的であることを確実にするため要求される。検証には、予防管理が、特定された危害要因を効果的に管理(control)できることを科学的な根拠により妥当性確認することを含む。温度計などの工程の監視及び検証のための機器の校正(正確さの点検)や、監視及び(必要であれば)是正措置が実施されていることを検証するための記録のレビュー。

製品検査及び生産環境の監視は、検証活動になり得るが、当該食品、設備、予防制御の性質、ならびに設備の食品安全システム内の制御の役割について適切な場合にのみ要求される。生産環境の監視は、一般に、環境中の病原菌により汚染されたすぐ飲食可能な食品が、予防管理が必要な危害要因である場合に要求される。

2)「農場」

2つのタイプの作業を含むことが明確にされた。「農場」と分類された活動には予防管理の規則は適用されない。

「一次生産農場」:穀物の生育、収穫、動物(水産物)の生育、あるいはこれらの組合せを行う一つの総合的な、しかし必ずしも隣接しているとは限らない農地が、一つの経営により管理される活動。この種の農場は、新鮮な農産物のような原料農産物を包装し保管することがある。また、ブドウを乾燥してレーズンを生産し包装し表示を行うようなある種の製造/加工の活動を行うこともある。

「二次活動農場」:収穫、箱詰め又は原料農産物の保管を行う一次生産農場以外の場所において行われる活動。収穫、包装又は二次活動農場が所有する原料農産物の過半を供給する一次生産農場が農場の過半を所有しなければならない。

3)供給チェーンプログラムの施行はより柔軟に行われる。

製造/加工施設は、供給チェーンに適用される管理(control)が必要となる特定された危害要因が明確にされた原材料に対する、リスクベースの供給チェーンプログラムの作成が義務づけられる。予防管理による危害要因の管理(control)、又は危害要因の管理を顧客に依存している時に適用される要求事項に従っている製造/加工施設は、その危害要因に対する供給チェーンプログラムを作成する必要はない。

顧客や他の製造者等の出荷先によって特定された危害要因が制御される場合は、予防制御の実施を要求されることはない。

4)運用中のCGMP(current good manufacturing practice)の更新及び明確化

指針に移すことが適切である拘束力のない箇条は含まない。

 

教育/訓練のようなこれまで拘束力のなかった箇条が義務化された。食品の製造、加工、包装又は保管に携わるすべての従業員は、かれらの職責を全うできるよう資格を付与し、管理することが求められる。

 

アレルゲンの交差汚染をCGMPに含めるとのFDAの以前からの立場は、規制に係る文書の中で明確化された。

5)施行時期

非常に小規模な企業(製造、加工、包装又は販売せずに保管した食品の市場価格及び食品の年間販売額が100万ドル未満):3年間。ただし、非常に小規模な企業であることを示す記録のない期間を除く。

小規模な企業(フルタイムの従業員が500人未満):2年間

他の企業:1年間

(5)野菜・果実安全基準(105条)

1)適用対象品目

FDAが指定する農産物(RAC、 Raw Agriculture Commodity)の定義に該当するもののうち、以下の品目である。

  • (1)野菜
  • (2)果物
  • (3)モヤシ等のスプラウト類
  • (4)ナッツの一部(マカデミアナッツ、くるみ等)
  • (5)ハーブ

2)適用の対象となる農場

ア 適用対象農場 (PCHFの適用除外となる農場の定義と同じ)
  • (ア)第一生産農場(農業生産活動を行っている農場)
    • 農産物の生産・収穫・肥育活動、包装・保管
    • 乾燥、エチレンガス等による熟成、ラベル貼り等の限定された製造加工
    • 当該農場内で自己消費を目的にした食品の製造加工・保管・包装
  • (イ)第二活動農場 (第一生産農場が大半(おそらく過半)を出資しその農産物の大半を取り扱っているケース)
    • 農産物の収穫・肥育活動、包装・保管
    • 乾燥、エチレンガス等による熟成、ラベル貼り等の限定された製造加工
イ 適用除外の農場

過去3年平均で、基準適用対象農産物の売上高が2万5千ドル以下

ウ 適用緩和の農場

過去3年平均で、食品全体の売上高に関し、同州内又は275マイル以内の直接消費者仕向け(直売店・レストラン含む)がそれ以外を超えている場合、又は当該売上高が50万ドル以下

3)適用対象農場が行うべきこと
  • (1)従業員向けトレーニング
  • (2)衛生管理の徹底
  • (3)農業用水の衛生管理

4)適用対象農場の記録保存文書

  • (1)農場の名称、位置
  • (2)農作物の名称
  • (3)農場全体の位置関係
  • (4)誰が検証活動を行ったかがわかるような検証活動の日付及びサイン

(6)意図的な食品不良事故の防止5)(第106条)

1)適用対象者

FDAへの施設登録が義務付けられている米国内外の食品関連施設(食品の製造加工、包装、保管施設)の所有者、運営者又は代理人。零細企業(過去3年の年間食品売上平均が1,000万ドル未満の企業)は、原則として本規則の適用対象外となるが、当局からの要請に応じ当該要件を満たしていることを証明する必要がある。

以下の施設は適用対象外である。

  • (1)食品の保管施設のうち、液体貯蔵タンクを使用していない施設
  • (2)食品の包装・再包装・ラベリング・再ラベリングを行う施設のうち、食品接触容器をそのままの状態で(特段それらに加工を加えずに)包装等を行っている施設
  • (3)動物用飼料の製造、加工、包装又は保管を行う施設
  • (4)危害の未然予防管理に関する規則(PCHF)上、低リスク活動に該当する製造加工等を行う農場
  • (5)大半のアルコール関係施設

2)適用対象者の遵守すべき事項

ア 食品防御計画の策定
  • (ア)施設に責任を負う当該施設の所有者、運営者又は代理人は、食品防御計画を書面で作成し、その計画を実行しなければならない。
  • (イ)食品防御計画は、
    • 各工程の脆弱性の特定分析結果(判断理由を含み、脆弱性がない場合であってもその判断理由は記載の必要あり)、
    • 食品不良事故の予防・軽減のための緩和戦略の内容(脆弱性の発現を防止する、または軽減する実行可能な戦略)、
    • 的確な頻度で行われるモニタリング(監視)の手順、
    • 是正措置
    • モニタリングや是正措置の検証手順
    が含まれるものとする。
  • (ウ)上記の脆弱性の判断に際しては、
    • 混入した場合の、公共の健康にもたらす影響の程度(深刻度、規模)、
    • 商品への物理的なアクセスのしやすさ、
    • 商品に攻撃を加える(汚染させる)と想定される攻撃者(内部の攻撃者を含む)の攻撃能力
    の3点を考慮する必要がある。
イ 脆弱性が特定された工程段階における(事故予防等の)緩和戦略

施設に責任を負う当該施設の所有者、運営者又は代理人は、脆弱性が特定された工程段階において、事故を予防・軽減するための緩和戦略を食品防御計画に基づき実施する。

ウ モニタリング(監視)手順及び頻度

施設に責任を負う当該施設の所有者、運営者又は代理人は、事故予防・軽減のための緩和戦略の実行状況を、上記食品防御計画に定められた手順・頻度に基づきモニタリングする。当該モニタリング(監視)はすべて検証の対象となり、記録保存が必要である。

エ 是正措置

施設に責任を負う当該施設の所有者、運営者又は代理人は、事故予防・軽減のための緩和戦略が適切に実施されなかった場合の是正措置の手順を、事前に書面化する。是正措置の手順は、問題の再発可能性を低く抑えるために、どのように問題を特定し、どのような適切な修正手段(是正措置)を講じるか、を記載する。是正措置手順はすべて検証の対象となり、記録保存が必要である。

オ 検証
  • (ア)施設に責任を負う当該施設の所有者、運営者又は代理人は、モニタリング(監視)が適切に行われていることを確認しなければならない。
  • (イ)施設に責任を負う当該施設の所有者、運営者又は代理人は、是正措置に関して適切な判断が 下されていることを確認しなければならない。
  • (ウ)施設に責任を負う当該施設の所有者、運営者又は代理人は、事故予防・軽減のための緩和戦略が継続的に実施され、重大な脆弱性を有効的かつ大幅に緩和又は防止していることを確認しなければならない。
  • (エ)施設に責任者を追う当該施設の所有者、運営者又は代理人は、
    • 少なくとも3年に一回、
    • 施設における業務に重大な変更があり、かかる変更により新たな脆弱性が生じるか又はすでに特定されている脆弱性が著しく悪化する合理的な可能性がある場合、
    • 当該所有者、運営者又は代理人が食品業務又は施設において起こりうる脆弱性に関して新たな情報を認識した場合、
    • 当該戦略には効果がないと考えられる場合、
    • 新たな脆弱性及び科学的理解の進展(米国国土安全保障省による生物的、科学的、放射線学的又はその他テロリスク分析を含む。)に対応するために、FDAが再分析を義務付けた場合は、事故予防・軽減のための緩和戦略を再分析し、必要に応じて食品防御計画を修正する。再分析の結果、既存の戦略に追加又は修正のいずれも必要がないと判断された場合でも、その結論に至った根拠を書面化する。
  • (6)に基づいて行われるすべての検証(モニタリング・是正措置の検証、計画(戦略)の再分析)はすべて書面化し、記録保存が必要となる。

3)作成、保存される記録に関する要件

  • 記録保存の対象は以下のとおり。
    • (i)食品防御計画((1)事故予防・軽減のための対策を行う工程を特定するための分析過程、(2)特定された工程における、事故予防・軽減のための緩和戦略、(3)モニタリングや是正措置の手順を含む)
    • (ii)モニタリング結果
    • (iii)是正措置の結果
    • (iv)モニタリングや是正措置の適切性の検証結果
    • (v)計画の再分析過程及び結果
  • 記録保存に当たっての留意点は以下のとおり。
    • (i)原本記録、真正な写し又は電子記録のいずれかで保存すること。
    • (ii)モニタリング(監視)中に取得した実際の数値及び観察に関する記述を含むこと。
    • (iii)正確、消去不能かつ判読可能であること。
    • (iv)書面化される業務の実行と同時に作成されること。
    • (v)業務実績の履歴を明らかにするための十分な詳細情報を含むこと。
    • (vi)施設の名称及び所在地、記録される業務が実行された日時、業務実行者の署名又はイニシャル、商品の識別及び(もしもあれば)商品コードを含むこと。
  • 食品防御計画は、当初の完成時及び修正時に施設の責任者である所有者、運営者又は代理人によって署名され、日付が付されるものとする。
  • 本規則により義務付けられているすべての記録は、作成された施設において少なくとも2年間保存が必要。
  • 食品安全計画書は使用終了後から少なくとも2年間保存。
  • 零細企業要件の適用を受ける場合は、適用期間中、そのステータスを証明する書類の保存。
  • 行政当局により口頭又は書面で記録の提出要請があった場合、本規則に基づくすべての記録を直ちに提出しなければならないが、要請時から24時間以内に記録を取得し、施設内で提供することができる場合に限り、施設外での記録保存も可能。ただし、食品防御計画は施設内に保管しなければならない。

(7)米国の食品輸入者による輸入食品の安全検証(外国供給業者検証プログラム)(第301条)

1)主な内容

すべての輸入業者は、輸入食品が海外供給業者によって本法に規定する予防管理等に従って生産されていること及びアメリカの法令に違反する不正がないことを確認する海外供給業者検証プログラム(Foreign supplier verification program:FSVP)を実施しなければならない。2015年11月に最終規則が公表された。主な内容は以下のとおり。

  • 輸入業者が、非米国の食品製造業者及び農場生産者のFDA関連規制の遵守状況を検証する。食品添加物や、トレーダーショーのサンプル品も基本的に検証対象。(食品の保管業者等は検証の対象外だが、食品に接するパック詰めは検証の対象) (注1)農産物については、農場も対象となるが年間売上高25,000ドル未満の農場は適用対象外。また、協同組合施設が集荷関連作業のみを行っている場合、検証対象は協同組合施設ではなく農産物の生産農場。 (注2)輸入業者とは米国輸入時の当該食品の米国内所有者又は荷受人。所有者や荷受人が米国でなく外国にある場合は、当該外国の所有者又は荷受人の米国代理人(契約書上で分かる者)がFSVP上の輸入業者に該当。
  • 各食品・供給メーカー毎にプログラムを作る。マトリックス表形式で全食品のリスク分析をまとめて行うのは不十分とされる。ただし、同一業者が製造する同じハザードのもの(例えば、同一商品でサイズが違うもの等)は、同じグループにまとめて検証することも可能。
  • 輸入業者と非米国の食品最終製造業者の間に、卸業者が入っている場合、当該卸業者等が輸入業者に代わって検証活動を行い、当該輸入業者が更にそれをレビュー・評価することも可能。
  • 輸入妥当性を輸入業者が判断するために必要な食品の危害特定・分析は、輸入業者自らが行わず、食品製造業者の分析結果を用いることもできるが、その場合でも輸入業者によってその分析手法や結果をレビュー・評価することは必要。
  • 各種記録は英語以外での保存も可。ただし、FDAから検査等で求められたときは、合理的な時間の範囲内(Reasonable Time。FDAの書類検査やその後の行政措置等に支障が生じない程度)で英訳が必要。

2)FSVPで行うべき事項

ア 各食品・相手先毎のリスク分析・評価 (輸入決定前、その後も定期的に実施)
  • 危害の特定・分析評価 (生物的危害/化学的危害/物理的危害)
  • 相手先の状況
イ 検証活動
  • 実地監査
  • レビュー
  • サンプルテスト
ウ 記録保存(2年)

3)零細企業の適用緩和

以下の場合は規則の適用が緩和される。

  • 過去3年平均で、食品売上高100万ドル未満の輸入企業である場合、又は、
  • 当該基準に該当する食品製造業者や、農産物売上高2.5万ドル未満の農場、食品売上高50万ドル未満の農場等、PCHFや農産物生産等基準の他規則適用緩和対象者等が検証対象に含まれている場合

4)輸入業者においてやるべきこと

毎年12月末までに、FDAに対し上記の定量的要件(緩和対象となるための売上高要件等)を満たしていることの証明。 2年毎に、FDAの各種食品規則遵守を行っている企業であることの概要(具体的には危害の未然予防管理の手順や規則遵守の履歴等)を書面で入手しFDAに提出。

  • オプション1(図1)

    外国供給業者が自己の敷地で危険を管理し、この危害への曝露が、ヒト又は動物に重大な健康への悪影響又は死をもたらす無視できない確率がある場合、輸入業者には外国供給業者の実地検査を実行するか、または実地検査の書類を取得することが義務付けられる。また、実地検査は、特定の農産品の微生物危害についても義務付けられる。

    外国供給業者が管理する、健康への悪影響又は死をもたらすおそれのある危害以外の危害について、食品を販売する前、またその後定期的に、輸入業者は、検証活動(実地検査、サンプリングと試験、供給業者の食品安全記録の審査、その他の適切な手続など)のうち1つ以上を実行することが義務付けられる。

    適切な検証活動を実施するときには、輸入業者は危害や食品そして外国供給業者の順守状況から提示されるリスクを考慮しなければならない。

    図1 外国供給業者検証 プログラム(FSVP)の提案規則図
    図1 外国供給業者検証プログラム(FSVP)の提案規則図

    資料:米国FDAホームページ

  • オプション2(図2)

    外国供給業者への供給業者が管理又は検証を行っているすべての危害について、輸入業者は実地検査、サンプリングと試験、供給業者の食品安全記録の点検、その他の適切な手続の中から、検証手続を選択する必要がある。適切な検証活動とこれをどの程度頻繁に実行するかを判断するとき、輸入業者は、重大な有害性をもたらす危害にさらされる可能性、食品及び外国供給業者の法令規則の順守状況などが示すリスクを考慮する必要がある。

    図2(1) オプション1
    図2(1) オプション1

    資料:米国FDAホームページ

    図2(2) オプション2
    図2(2) オプション2

    資料:米国FDAホームページ

(8)食品の輸入迅速化のための任意プログラム(任意適格輸入業者プログラム)(第302条)6)

FDAの認定を受けた機関(外国政府、民間機関)の認証を受けた第三者監査機関(外国政府、民間機関ともに可)による監査の仕組みが創設された。(2015年11月、規則公表)認証第三者監査機関は、監査等を通じ、公共の健康に重大なリスクが生じ得る状況を発見した場合にはFDAに通告する義務等が生じる。

当該監査機関の利用が義務付けられるのはFDAが特定食品に関して特定の場合にリスクがあると判断したときのみである。ただし、それ以外に、輸入業者の判断で利用できる場合として、以下の2つが考えられる。

  • FSVPにおいて、輸入業者が実地監査を当該監査機関を利用して行う場合
  • 輸入業者が以下の自主的適格輸入業者プログラムに参加する場合(同プログラムに参加する場合、輸入食品に関して、当該監査機関の監査を受けていることが前提)

2015年6月に公表されたガイダンス文書案で示されている任意適格輸入業者プログラム(VQIP)の概要は以下のとおり。

認証第三者監査機関の監査を自主的に受けた外国の食品供給業者からの食品を輸入業者が入荷している場合、当該輸入業者はFDAにプログラム参加料を払うことで、輸入時に他の商品と別管理でFDAに審査を依頼することができる。(輸入審査に係る時間の短縮が期待される他、サンプル検査の際に輸入業者の指定する地域で検査が受けられる等がメリットとされる。)

  • 参加可能な輸入業者の要件: 最低3年間、米国で輸入取引実績があること。対象となる取扱商品や、その製造業者がFDAの輸入警告を受けている等米国の規制に抵触する実態がないこと等。
  • 輸入業者のプログラム参加料金 :毎年8月1日までに参加料金をウェブに公表し、10月1日までに支払う。
  • プログラム適用期間:1年間(毎年10月1日~翌年9月30日まで)
  • プログラム申込期間:毎年1月1日~5月31日まで
  • プログラム申込方法:ウェブでアカウントを作成し申込みする方法を検討中(申込時にDUNS番号を含め、輸入業者の基本情報が求められる他、輸入業者の品質保証プログラムをFDAに提出することが必要となる模様)

(9)輸入食品に対する証明書の要求(第303条)

2017年2月現在、証明書を要求する場合の条件等詳しい情報は公表されていない。

FSMAでは証明書を要求する場合に考慮すべき事項として以下の点を含めるとしている。

  • (A)食品に関する既知の安全リスク;
  • (B)食品の原産国又は原産地に関する既知の安全リスク;
  • 以下のことを示す、FDA当局により科学的、リスクに基づく証拠に基づく事実確認
    • (i)当該国・地域の食品安全制度、システム及び規格基準が、この法律に基づき米国内で製造、加工、包装又は保存される食品と同等の安全性を確保する上で不適切であること;また
    • (ii)証明書が、FDA当局による食品流通の可否の判断を補助すること;
  • (D)情報が規則に基づきFDA当局に提出されること。
    証明書を発行する認証機関については以下の条件を付している。
  • (E)FDA当局により指定された、当該食品が生産された国の機関若しくは国の代理人;又は
  • (F)認証や保証を与えるため別途定められた規定に基づき認定された者又は法人

(10)第三者監査制度の導入(第307条)7)

(8)及び(9)における認証第三者監査機関及びそれらを認定する機関に必要とされる要件、手続き等が規定されている。

認定機関を公認する条件として、

  • (1)契約等に基づく記録の閲覧、監査の実施、認定の保留、撤回等の権限を有していること。
  • (2)第三者認証機関の適格性を効果的に評価できる知識、技術、経験を有する人的資源、財源等を有していること。
  • (3)第三者認証機関との間の利益相反を防ぐための文書化した方策を有し、実施していること。
  • (4)文書化した認定プログラムを実施していること。
  • (5)文書化した記録に関する手順を実施していること。

を求めているほか、そのために必要な手順について規定している。認定機関の公認の有効期間は5年とされている。

第三者認証機関に必要な要件として、法的権限、適格性・能力、利益相反防止策、品質保証手続、記録手続き等を求めているほか、そのために必要な手順について規定している。認定の有効期間は最大4年である。

(11)試験所の認定制度の導入(第202条)

海外の試験所も認定の対象となる。

認定の条件として

  • 適切なサンプリング及び(簡易分析を含む)分析手順並びに商業的に利用可能な技術を有し、分析結果の正確性が保証されていること。
  • 内部品質システムが維持されていること。
  • 認定された分析に対する苦情処理システムを有していること。
  • 分析を行う要員の能力が教育訓練及び経験により担保されていること。
  • その他FDAの定める要求事項に適合していること。

などが規定されている。少なくとも5年に1度、能力の再評価が行われる。

(12)高リスク食品のトレーサビリティの強化(第204条)

規則案等はまだ公表されていない。

FSMAによれば高リスクとされる食品に対する要求事項は以下のとおりとされている。

  • (A)合理的に利用可能で適切な情報に限られること;
  • (B)科学に基づくものであること;
  • (C)記録の保存に関して特定の技術を指示するものではないこと;
  • (D)公衆の健康に関する利益が、要求事項を満たすための追加的な記録作成・維持のためのコストを上回ること;
  • (E)記録の作成・維持のためのコストと労力について、施設の多様な規模と能力に応じた現実的なものであること。また、情報が通常の取引で保存される他社の記録に含まれる場合には記録を重複して作成・維持する必要はないこと;
  • (F)1つの種類より多い食品を扱う施設に対する異なった記録保存の要求事項を最小化すること;
  • (G)対応可能であれば要求事項を満たすために業務システムの変更を求めないこと;
  • (H)FDAの当局が要求した場合に24時間以内に当局に届くよう中央又は連絡可能な場所に本規則により要求される記録を維持するための人員を任命すること;
  • (I)そうした要求事項が個々の施設又は特定分野の施設に対して経済的に困難を及ぼす場合に、当局が適用除外を認める手続を含むこと;
  • (J)当該食品の既知のリスクと比較して適切であること;
  • (K)貿易上の義務を考慮すること;
  • (L)以下について要求しないこと
  • (i)食品の原材料に関する完全な由来又は過去の完全な配送の履歴;
  • (ii)食品の直接の受け渡し先のさらに先の受け渡し先の記録;又は
  • (iii)要求事項に応じ、個人レベルまでの製品の追跡;及び
  • (M)規定に従い、当局が高リスクとされた特定の食品又は食品群を除去するための手順を含むこと。

(13)衛生的な食品輸送(第111条)8)

米国内の陸路輸送時に温度管理が必要でありバルクで輸送する食品に関し、米国内の運搬に関係する出荷業者、積込・運搬業者、食品の受領業者それぞれに、衛生管理のために必要な義務付けを行う。該当する食品を出荷する業者は、運搬・積込時に必要な指示を積込・運搬業者に出し、記録を保存する必要があるなど、一義的な責任を負う形になっている。

該当する食品を米国外から米国に輸出している場合も、以下のとおり運搬等に関わる関係者が規則の適用を受けるため留意が必要である。

  • 米国外の出荷業者(輸出業者、食品製造メーカー等)が、温度管理等米国内輸送の衛生管理に関して実質的に指示する立場にある場合は、同規則上の出荷業者に該当。

一方で、米国内の荷受人が、米国内の運搬等の際の温度管理、バルク輸送の留意点などを指示する立場にある場合は、当該荷受人が、出荷業者として同規則の適用を受ける。

1) 適用対象者

  • 出荷業者:米国向けに食品を最終出荷する米国外の業者(食品メーカー、輸出業者等)であっても米国内の運搬・積込中の衛生管理に権限を有する場合は適用対象。
  • 運搬業者・積込業者:米国内のトラックや鉄道車両の輸送・積込に限る
  • 受領業者:最終完成品に限らず、米国内で食品を受領する者

(※)平均年間収入50万ドル未満の業者は適用対象外。

2) 適用対象となる食品

  • 完全に包装がなされていない食品(バルク輸送の食品等)
  • 包装済み食品であっても温度管理が必要な食品(要冷蔵食品等)

適用対象食品は、すべての食品・飲料品で、アルコール飲料やジュース類、水産物も含む。最終完成品に限らず、追加加工の必要な原材料も対象になる。また、食品包装材、動物に仕向けられるヒト向け食品の副産物(追加の加工処理が行われないもの)、家畜(軟体動物貝類を除く)は対象外。

5.施行期日

すでに施行された規則もあるが、いくつかの規則については規則案の公表、施行の遅れにより当初予定された期日が延期されているものもある。小規模な組織に対するものも含めるとFSMAすべての完全適用は2020年位までかかるのではないかと見られている。

参考文献

  • 1)JETROホームページ
  • https://www.jetro.go.jp/world/n_america/us/foods/fsma/basic.html、2017/1/17確認)
  • 2)「米国食品医薬品局(FDA)による日本の食品供給施設査察ハンドブック」(2014年10月、日本貿易振興機構(ジェトロ))
  • 3)「米国連邦規則第21巻 パート 1 (21CFR1) 施設登録に係る修正規則(仮訳)」(2016年10月、日本貿易振興機構(ジェトロ))
  • 4)FDAホームページ
    http://www.fda.gov/Food/GuidanceRegulation/GuidanceDocumentsRegulatoryInformation/FoodDefense/ucm274176.htm、2017/01/18確認)
  • 5)「意図的な食品不良事故防止等に係る規則の公表について(速報版)」(2016年5月、ジェトロ・シカゴ事務所)
  • 6)「食品安全強化法の主要規則解説等」(2015年12月、ジェトロ・シカゴ事務所)
  • 7)「食品安全監査を 実施し認証を発行する第三者機関の認定(仮訳)」(2015年12月、日本貿易振興機構(ジェトロ))
  • 8)「ヒト向け及び動物向け食品に係る衛生的な輸送に関する規則の公表について」(2016年4月、ジェトロ・シカゴ事務所)
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